イントロダクション
二千年前、ふたりの神が出逢ったみち
神代の昔高天原よりやってきた天孫ニニギノミコトは
ある川のほとりでコノハナサクヤヒメに出逢う。
二人が暮らしたゆかりの地をつなぐ道は
やがて「記紀の道」と名付けられ
古より湧き出づる水辺とともに
今もなお人々は寄りそい暮らし続ける――
15年前、みちづくりから始まった
舞台は宮崎県西都市。
おおらかな風景の中で、住民たちは、小川ではホタルを育て、水鳥のやってくる美しい池を守り、古代蓮や季節の花を育てる。
記紀の道で繰り広げられる何気ない日常は、一枚の古代地図を通して、やがて神話の世界と重なりだす。
神話の物語
ある日、小川のほとりで
水汲みをしていたコノハナサクヤヒメ
その美しい姿を見初めた
ニニギノミコトは
結婚を申し入れます....
土木の話
かつてこの一帯が区画整理されようとする中、多くの遺跡が発見された。市は開発から保存へと舵を切り、2005年、風景を守り後世に伝えるために記紀の道整備事業をスタートさせた。
小川、田んぼ、巨木といった土地の風景をデザインの拠り所とし、昔からそうであったかのような風景をめざした。行政と住民が協力しあい、15年以上かけて少しずつ完成させた。
そうしたプロセスが評価され、グッドデザイン賞や国土交通大臣表彰手づくり郷土賞などを受賞。一般的には住民が関わる機会の少ない公共事業だが、地域づくりの仕組みにうまく組み込むことで、自走する風景づくりが続いている。
みちづくりという公共事業がつなぐ人々の想い
地域の愛情がおりなす一本の「みち」
目の前に、今を生きる道があれば、
それはきっとどこかへと続いていることを教えてくれる。
地域の人々に愛され育てられてきた神話伝承のみち。
土地とつながる記紀の道に寄りそい暮らす人々。
20年に及ぶみちづくりは、二千年の風景を受けとり、明日を紡ぐ。
何気ない日々の暮らしが
数千年という風景に続いている
監督 古木 洋平
はじめて記紀の道を訪れた日、川でキャベツをまき、蛍のエサとなるカワニナを育てる一心さんと出逢いました。蛍の成長する逢初川の源流付近は、まさに記紀神話のなかで、ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメが出逢い、命を授かった場所として、この土地では語られています。命を司る「蛍の光」は、コノハナサクヤヒメという限りある命の象徴がもたらす神話と交錯し、時をこえて、古と今が光によって結ばれていく不思議な時間をもたらしました。
そこに暮らす人々は、"記紀の道"に寄り添い、道を大切に想い、うつくしい景観を守り、育てます。何気ない日々の暮らしが、数千年という記憶をもつ風景に続いていくのだろうということを考えながら、神話につながる瞬間(それはポッカリと穴を開けて目の前に現れる)を探しながら記録した映画です。のんびりと道を歩くように、この映画をみてもらえたら嬉しいです。
コメント
歌手・西都市民会館館長
米良 美一
スクリーンいっぱいに映し出された
のどかで美しい日本の原風景…
ここ西都は、
古の世の神々が御座す
神話の舞台です。
悠久の神代に想いを馳せながら、
しばしこの作品をご堪能ください。
映画「みちのみちのり」には
大自然とそこに息づく生き物との、
豊かなニュアンスが感じられます。
多くの皆様に
美しいこの故郷の魅力が伝われば
うれしいですね!
写真家
西野 壮平
"人が歩くことで道というものができ
道を守ることで人が育っていく"
記紀の道を大切に想う人々との対話を
描いたこの映画を観ると、
多くの人々の何気ない日々の想いの
積み重ねによって、
自分という存在が今ここに在る
ということについて改めて気づかされる。
道には道のりがある。
私はこれからもその道の上を
踏み締めるように歩いていくんだなと感じている。
神話の国の風景の手入れをする人々。
この映画には、インフラの根幹が映っている。
NEY&Partners Japan 代表取締役 渡邉 竜一
冒頭で素晴らしい自然の風景と水鳥、そして、蛍の飛翔の光景がでてきて、さすがプロと思わせられたのだが、上述した動画と違って、その後に続けて、いきなり出てきたのが、普通の老夫婦の日常風景だった。ボランティアでの花の植栽や掃除、子どもたちの授業といった日常と2,000年の悠久の時を経た過去の遺跡がナレーションもない中で淡々と描かれていく。で、ふと気が付くと70分という上映時間が過ぎていた。
70分とごく短時間ながら、まさに西都に旅して、その土地の人々と遠き歴史に思いをはせ、復活した自然やそれと密接につながる古代からの伝承の祭りに参加し、また東京に戻ってきた、そんな余韻が残った。とりわけ、ホタル再生に取り組む一心さんが、映画の中で「ホタルの再生の仕方は西米良の人から教わった」というセリフがあり、だとすると教わったのは、あの照葉樹の緑が深い沢のあたりだろうかと今年の春、訪れた山河の光景が脳裏に浮かんだからかもしれない。
とかく、自然保護や環境保護系の映画は上から目線でのイデオロギー性が強いものがあるのだが、ナーレーションもストレートなメッセージもないこの映画は、逆に「では、自分は何をするのか」という旅した人々との出会いを考えなければならなくなるような映画だ。是非、見ていただければと思う。
妻北地域づくり協議会 会長
五島 哲也
ボランティア団体の妻北地域づくり協議会は、記紀の道及び周辺で毎年各種のイベントを継続して開催してきた。
映画「みちのみちのり」は、我々よりも遥かに多くの人々が記紀の道を利活用する姿や人間模様を見事に切り取っている。
これはまさにドキュメンタリー時代映画と言える。
将来は世代交代の時期を迎え、記紀の道でどのような活動がされているかも興味は有るが、「みちのみちのり」と対比する、と言う楽しみを後世に残してくれた映画でもある。
映画のなかにはたくさんの時間が流れています。
神話「記紀」の時間、かつて生きていた人たちの時間、此処の自然を未来へ引き継ごうとする人たちの時間、子どもたちの時間、そして繰り返される生きものの時間……。
映画のきっかけは公共事業「「記紀の道」のみちづくり」。公共事業の奥にある、いや、公共事業の隣にある/いる、さまざまなモノやコトやヒトが多層レイヤーのようなかたちで立ち上がってきます。
ニニギノミコトと、コノハナサクヤヒメとの神話。神話や伝統を守る方々のドキュメンタリー映画。この神話が生き続ける為に、地域を守り続ける方々。神話を語り継ぐ方々。
ありふれた町並みに、こんなに人の想いが詰まっていたとは思いもしなかったです。
心から感謝の気持ちと、西都市の誇りを再確認した胸に残るとても素晴らしい映画でした。
神話の国宮崎県西都市の神話。
市民のかたの自然を守り、蘇らせる奉仕。そして伝承。
『みちのみちのり』その市民のかたの暮らしと自然と調和した『記紀の道』
土木『土と木の柔らかさ』人生の道 生活の道
この映画『みちのみちのり』は頭ではなくて魂が感動する。丹田から湧き上がる涙。
土木の真髄に迫るものがあり、現代、合理、資本主義を超えるには、我々土木技術者に、いま何ができるかを考える時代に来ていると思います。その問題意識がとても近いなと感じてとても嬉しかったです。
応援していただいた皆様
映画「みちのみちのり」は、地域の皆さんや関係各所のご協力、クラウドファンディング等を通して協賛していただいた全国の方々のご支援により制作されました。
監督:古木 洋平 プロデューサー:清武 清 企画:小笠原 浩幸/伊東 修司/崎谷 浩一郎/西山 健一
撮影:牛久保 賢二/Matthew Carmody 音楽:Polar M/東 瑛子 アニメーション:渡辺 亮
整音:家崎 大 デザイン:田中 翼
サポートスタッフ:藤崎 秀一/武長 信亮/福永 昌俊/川添 詩織/濱門 康三郎/福冨 可南子
制作協力:西都市/妻北地域づくり協議会/歴史を活かしたまちづくり推進委員会/西都市地域おこし協力隊
撮影協力:宮崎県立西都原考古博物館/西都市歴史民俗資料館/日向國二之宮 都萬神社/妻北小学校/稚児ヶ池保育園/三谷木材産業株式会社
協賛:企業・団体52社 個人278名のみなさん
2022年/日本/70分/カラー/16:9/DCP